女子校コース(落乱)
□第四話 いー子の休日
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「きみ可愛いね。カラオケ行かない?」
その女、二郭 伊里はうんざりしていた。
今日は日曜日で、虎子とショッピングにでも行こうと思っていたのだが、生憎彼女は部活があって断られた。
仕方なく一人で行こうと街に出たのが運の尽き。
伊里は比較的美人なのですぐに街の男どもに目をつけられ声をかけられる。
これではゆっくり買い物などできはしない。
ふぅ、と溜息をついて伊里はとある小さいカフェに入った。
ココならば少なくとも外よりは男どもが寄ってこないだろう。
『カラン、カラン』
小気味いい音を立ててドアが開くと、いらっしゃい、というマスターの声が伊里を迎えた。
「………なによ、これ」
思わず漏らしたその声は店内に騒々しさにかき消された。
伊里が入ったその小さいカフェの店内には、若い男から中年のおっさん、挙句の果てには年配のおじいちゃんまでがカウンター、ボックス共に座っていた。
女性向けに作られたおしゃれなカフェなのに、どうしてこんなにも男の比率が多いのか。
街を歩いているより鬱陶しいこの光景に伊里は大きく大きく溜息を吐く。
「おっ!可愛い嬢ちゃんだな!おっちゃんの隣来るか!」
飲み屋のノリで話しかけてくるおっさんに伊里はわかりやすく嫌悪の表情を表に出す。
外に出よう。
そう思って扉に手をかけたその時、
『カラン、カラン』
開けようとしていたドアがいきなり開いて伊里はビックリした。
そして入ってきた人物にも驚愕の声を上げる。
「―――摂津…さん?」
「お〜きりちゃん!待ってたよ〜!!」
「きりちゃん今日も可愛いな!」
「キリコさま〜癒される〜」
伊里の声が店にいた客の歓声に消される。
「あれ?二郭さん?どうしたの、こんな処で」
「そ、それはこっちのセリフよ!なんで摂津さんが…?!」
「あ〜私ここでバイトしてんの。ウエイトレスの☆」
「…ウ…ウエイトレス…?」
伊里は驚きすぎて声がうまく出なかった。
確かに目の前でにこっと笑う女の子がバイトを何個も掛け持ちしているという事を聞いてはいたが、まさかこんな処で偶然会うとは。
「ごめんね、二郭さん。私準備しなくちゃいけないから…良かったらゆっくりして行ってよ」
そう言って、男たちが陣取るカウンターを二席ほど無理矢理確保して伊里に座るように施した。
「この子は私の友達だから変な事したら怒りますよ!」
そして男どもにそう言い残して裏へと消えて行った。
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