芸能コース(落乱)

□月9忍たま!act.07
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Act 07 「土井 半助」



綺麗な子だ、とそう思った。

この世界で長く務めている俺の眼はかなり超えているはずだ。

それでも一瞬で目を奪われた。

――人形のような子供。
そんな印象が強かった。

その子供は俺の元へと寄ってくると、にこりとあどけない笑顔を寄越した。

「初めまして、土井さん。おれ、摂津 桐と言います。これからよろしくお願いします」

子供は嫌に礼儀正しかった。

『摂津 桐』…昔有名な大女優の苗字が“摂津”だった。

俺は彼女のファンで、その時青春を謳歌していた俺の理想の女性像だった。

子供は、彼女によく似ている。

あぁ、そうか。この子が…

「よろしく」

俺が短くそう答えると、子供はまたにこりと笑って他の役者のところへと向かって行く。

大女優の彼女に子供がいたのを知ったのは、彼女が死んでまもなくの事だった。

大勢のマスコミに囲まれて、その子は派手な芸能界デビューを果たした。

その子の噂はいろいろと聞いていた。

嫉妬やひがみで他の役者たちが収録中に彼を貶めたりとか、他にも陰湿ないじめが繰り返し繰り返し彼を襲っていたという。

それでもその子はこの世界を辞めたりしなかった。

着実に力をつけていき、今や“天才子役”などと呼ばれるほどにまで上り詰めた。

今目の前にその子がいる。
一人の立派な「俳優」として。

これは俺も、うかうかしてられんな…。

幸か不幸か、この子とは何かと絡むことが多い。




喰うか、喰われるか。




さぁ、お手並み拝見といこうか。


*

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