リク&キリリク

□ブラッディ・ラブ
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「…もう最悪」
「何が最悪なんだ?」
神様は不公平だわ!この女より女らしい顔のアルトには苦しみを与えずに、日々精進で頑張っているあたしばかりを苦しめる!

1ヶ月に1度の最悪デー到来にシェリルの不機嫌は最高潮に達していた。寝ても覚めても立っても食べても苦しい。

「……ブルーデーなのよ」
「あ?」

地を這うシェリルの低音ボイスにも意味の分からないアルトは、ぽかんとしている。

「だ・か・ら!生理」
「!!」
アルトの鼻先に人差し指を突き付けて力説されても、アルトには天然リトマス紙の様に青くなったり赤くなったりする事しかできない。

「おまっ…一応女なんだからもう少し…」
「はっきり言わないと分からないでしょ」

もっともである。
アルトはグッと言葉に詰まりため息を付いた。

「アルト」
「あ!?」

ソファーに座ったシェリルが、右足を持ち上げる。ミニ丈の制服から覗く太ももが、艶かしい。

「ブーツ脱がせて」
「はぁ?何で俺が」
「……痛い」
「シェリル!?」
途端にお腹を抱えて、ソファーに倒れ込むシェリル。

分かったよ!
やりゃあいいんだろう?やりゃあ!!
諦めたアルトはひざま付き、わがままな女王のおみ足からブーツを脱がせた。

「ありがとう」
「どういたしまして」
ヒクヒクと引きつるアルトの笑顔を綺麗に無視して、今度は両腕を伸ばして抱っこをねだる。

「あぁ!?」
「ベッドへ連れて行っ……て?」
アルト見上げて、濡れた瞳で懇願する。金髪がサラリと肩から零れて華奢な首がのぞく。シェリルに可愛く(例え確信犯と理解していても)おねだりされて、拒否できるアルトではない。

「くそっ」

一言毒付いて、長身のわりには軽い体を姫抱きで持ち上げる。

シェリルは、振り落とされない様にアルトの首に両手を回して、首筋に顔をうめる。濡れた吐息がアルトの耳元をくすぐった。

「くっ」

シェリルと密着すれば、即、下肢の欲に直結する若さが嫌だ。しかも生理中となれば、今日はわがまま女王の下僕で終わるのだろう。

まあ、生理中の女を抱く趣味はない。

「アルト?」
「髪を引っ張るな」

少しでも自分から意識が他に移るのを嫌うシェリル。

可愛いかったり
面倒だったり

その時々で気持ちがブレるのは、まだまだ自分がガキだからだろう。
仕方がないとは思わないが、大人になりたいとは思う。

わがままなシェリル事
臆病なシェリル事

スッポリ包める男に。

キングサイズのデカイベッドに女王をそっと下ろす。

「次は何を致しましょうか?女王様」
「制服脱がせて。シワになるから」
「……………仰せのままに」

いつもは無我夢中で脱がせる学園の制服を今日は、本当に脱がせるだけ。挫けそうな理性を総動員して、ピンクのリボンを取り青の制服を脱がせた。
中はシンプルな黒のミニワンピースになっている。パイロットコースの制服は色も人気だが、可愛いいだけでは入れない。
この女王が、口先だけの高飛車女ではない証にもなっていた。
豊かな金髪を左腕で持ち上げて、右手でファスナーを下ろす。
キャミソールからは隠しきれない豊かな胸が、盛り上がりアルトを誘惑した。あわてて視線をそらして、ゆっくりとワンピースを脱がせる。
ハンガーにかけようと、シェリルの側を離れかけるアルトの制服のシャツを引っ張る女王。

「そんなのいいから」
「ああ?お前がシワになるとか言ったんだぞ」
「クリーニングに出すわ」
「…………」
わがまま放題だな。アルトは諦めて、せめてシワにならない様にとソファーの背に丁寧に置いた。
「アルト」
「今度はなんでしょうか?」
「あっためて?」
「あっあっ……」
「もちろんエッチはなしね?」
「………………」

早くー
と、両手を伸ばす女王に根負けして、ベッドに乗り上げる。
抱き着いて来る体をやんわりと抱きしめてやる。柔らかな胸や甘い吐息が切なく苦しいが、この苦行も一種の幸せか。

くそっ

盛大に胸のなかで呟いて、ベッドにそろりと寝転ぶ。
寒くない様にとブランケットをシェリルの肩まで持ち上げて、あたためる様に両腕で包み込んだ。

「…アルト」
「ん?」
「当たってる」
「大人しく寝ねぇと、食うぞ」
「きゃあ」
オーバーに悲鳴を上げるが、アルトはそんな男ではない事を熟知しているシェリルは、やがて安心した様に眠りに落ちた。

くそ
のんきに寝てやがる。

金糸に指を絡めて、優しく撫でる。

可愛いい寝顔が見れるから仕方ないか

もんもんと眠れぬ夜になる事をアルトは覚悟した。




 

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