01/07の日記

01:10
葉牡丹
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青の童話より


フロンティア王国の国印は薔薇に十字であった。
今を遡る事17年前、金糸の髪と空色の瞳の愛らしい姫が生まれた。背に国の印しを抱いて。
王国の長い歴史に前例は存在して、国の印しを持って生まれし赤子はやがて成長して、国や民に幸せと財を運ぶ存在となる。何時しか神に祝福される者と呼ばれ人々に愛された。
姫もまた祝福の姫と呼ばれてフロンティア国民の絶大な支持を得ていた。


外から風に乗って、柔らかな薔薇の香りが香ってくる。姫は金糸の髪をなびかせて、外の扉を開けた。
広い庭園一面に咲く姫の瞳と同じ空色の薔薇が、祝福の姫を歓迎するように柔らかに風に踊った。

カタリ

「アルト?」

背後から物音がする。己の騎士かと歓喜に頬を染めるが、己が騎士でも太陽の騎士と呼ばれるミハエル・ブランである事に気が付き、姫は残念そうに眉根を寄せた。
騎士は姫の正直な態度に苦笑しつつも優しい眼差しで、跪く。
「月の騎士は王の命で早馬を飛ばしていますよ」
「…アルトはお父様のものではないのに」
ミハエルの口付けを手に受けながら姫は拗ねた口調で瞳を曇らせた。

フロンティア王国の姫、シェリルは美しく聡明で、民思いの良き姫だ。ただ少し難点なのは、じっとしていられない性分で、まわりを巻き込んで暴走する事と…仲間であり親友でもあるアルトを好きすぎる…と言う点だろうか。しかしミハエルは姫と共に居ると退屈しないので、とても気に入っているし命を懸けられる存在として不服はない。親友の気持ちも知っているので、焚き付けつつ見守っているのだ。

「アルトは風より早く駆けれますよ。すぐに姫の元に帰って来ますよ」

扉がノックされる音がする。シェリルの侍女グレイスの声が聞こえる。
『お帰りなさいませ。アルト様』

「…ほら…ね。」

ミハエルに背中を押されると、姫は駆け出した。愛しい者の元へ…背中に刻まれた十字の印しを見つめながらミハエルは、己が主と親友の幸せを心から願った。





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