薄*桜*鬼
□犬の恥じらい
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風間視点
この俺が想いを寄せる人間、龍之介は一言で言えば可愛らしい。
まぁ、可愛らしいだけでは済まぬような部分もあるのだが、惚れた弱みというやつか…全てが可愛く見えてしまう。
俺が少しからかっただけで拗ねる所や、食い物にすぐに釣られる所、挙げればきりがないな…。
恋仲になった以上、閨も共にしたいと思うのだが、中々上手くいかぬ。口付けでさえ頬止まり…いつまで我慢させれば気が済むのか…。
「…ぃ…お…!…」
?…龍之介が呼んでいるようだな。貴様等にはまた次の機会に龍之介の良さを語ってやる。
「何だ…龍之介?そんなに俺に構って欲しかったのか?」
ニヤリと口端を上げて笑みを浮かべる俺に、龍之介は顔を真っ赤に染めて眉を吊り上げた。
「なっ!?べ、別に構って欲しいなんて言ってねぇだろ…」
口ではそう言いながらも雰囲気から寂しかったと窺い知れる。
こうなってしまった龍之介は何が何でも意地を通そうとする。
その機嫌をとるのも俺の役目だが、全てが可愛い龍之介の機嫌をとれるのならば俺の自尊心など露と消える。
「…俺が構わなかったから寂しかったのだろう?…ほら、来い」
両手を広げて俺なりの優しい笑みを浮かべれば、ムッとしながらも近付いてくる。
「…寂しかった訳じゃねぇからな。…風間が構ってほしそうだから仕方なく…んっ!?」
可愛らしい言い訳を述べる龍之介に俺の理性が我慢できるはずもなく、勢いで言い訳を連ねる唇を塞いだ。
唇を重ねてみれば、それは極上の甘露のようで…俺は欲を抑えきれずついついその甘く蕩ける唇を好きなだけ貪った。
苦しげに眉を寄せて快感に頬を朱に染める様は、まるで誘っているようで…
「んっ…ふぁっ、んんっ…」
「あぁ…すまぬな。あまりに旨いものだからつい抑えがきかなかった」
唇を離してそう冗談混じりに告げれば、荒い呼吸をしながらも此方を睨む濡れた双眸…。
「龍之介、誘っているのか?」
その瞳に煽られるように口端を上げると、耳元に唇を寄せてそっと囁いた。
「っ…誘ってなんかっ…」
瞳を涙で潤ませながら意地を張る龍之介に俺の理性が抑えられるはずもなく、そのまま龍之介を押し倒した。
…その後何があったかは、想像に容易いだろう。
何があったかは、またいつか、気が向いたら語ってやる。
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