♂x♂

□苦い苦い
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「よっ!ジース
今日の賭けはパーフェ…」

………
今日もまた、元気が無い


覚悟を決めて来た筈だけど、やっぱり悲しいもんは悲しいまんまで。

この虚しさに慣れる日は、来ないんじゃないだろうか



「ジ…ース」


歯を食い縛って呟くと、ジースは今日初めて曇った瞳で俺を見た


「あぁ…おはよ!悪い。今日の賭け、何だって?」


無理矢理そう笑って歯を見せるジースが、俺を更に苦しめる



「あ…あー、今日?…今日…何だっけか…はは…」


ド忘れした。…と言うより賭けなんかもう、どうでも良くなった


「…どーしたんだ?元気無いぞ!なんか有ったら俺に話してくれりゃ良いからな?」


原因。お前だよ。
そう言ってしまいたい。が、出来る訳も無くて。


こいつが隊長を想っている事を俺は誰より知っている

こいつが隊長を見る様に俺もお前をずっとずっと見てるんだから。

優しいジースは俺がこの気持ちを伝えたらどうするんだろうか。こいつの事だ。俺が傷付く様な事だけは絶対に言わない

でも言うべきじゃない事くらい俺にだって解るし。俺はそれで良い。
一番じゃなくったって。



―…おい、バータっ!あれ、やってやろうぜ!…


そう言って俺を求めてくる。こいつのコンビは俺で。

隊長には務まらない。二人で組めば恐いもんなしだ。


「……」

「おーい!バータ?!
なーに突っ立ってんだよー?!早く来いよ!」

「あ…?ああ!!」


ジースは、笑顔を俺に向けて、遠くの方で手を振りながら俺を呼んでいる。

このままでいい。
言わない方が、聞かない方が幸せだって事もこの世に絶対有るはずだ…



………―


俺達に敵は居ないと思った。最期までお前と組めただけで、俺は幸せ者だったに違いない

例え、あの世に来たお前の第一声が、


「隊長…」
だったとしてもな…。



涙を溜めて俺を見るなら、いつだって俺の胸を貸してやろうと思う。


「…俺っ、」

「ジース、お前の相棒は隊長じゃない。この俺だ!泣け!ジース!」

「バーター…」



片想い相手以上に、


「俺達は仲間だ!
そうだろ、ジース、な…」

「そうだな…」


それ以上は望まないから。
ずっとこのまま。


「今度…チョコ奢れよ」

「はは、地獄に売ってたらな」

「苦いのは嫌いだからな。とびきり、甘いやつだ。とびきり…」

「おう…」



ーENDー

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