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□敬老の日
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ー敬老の日ー


バタバタ…
「おじいちゃん!!」


心の中が手に取る様に解る笑顔で走ってきた愛する孫。

なんて可愛いんだ
ぎゃあぎゃあうるさいカカロットからこんな可愛い子供が産まれるとはな…


「久しぶりだな、悟天」

「今日は何の日でしょうか」


相変わらずの笑顔で唐突にそう言った悟天に目を丸くする。

悟天の誕生日?ではない
もちろん自分でもない


しばらく考えて、まだかまだかと胸を踊らせる悟天に笑みを向けた


「さぁな…何だろう」

「えーっ!?本当に解らない?本当にー…?」


さっきの笑顔と打って変わり、今度は眉を下げて明らかに落胆して居る様だ

表情がころころとよく変わる


「本当だ」

「もう、今日はね、おじいちゃんの日なんだよー?」

「…おじいちゃんの日?」


口を尖らせ、そう呟く悟天。

もう一度記憶を辿ってゆっくりと考えてみるが、そんな日…やはり聞いた事が無かった。


「そう!えっと確か、おじいちゃんに『ありがとう』を伝える日!」


誰に聞いたのか、きっと悟天なりに解釈した結果がこれと言う訳か。

本当にそんな日があるならばなんて曖昧な行事だろう


「悟天は、『ありがとう』を伝えに来てくれたのか?」

「そう!」


大きく頷いた悟天は、へらりと隙だらけの表情で笑う。…自慢気だ。


「なんと今日は、大好きなおじいちゃんにプレゼントを作ってきましたー!」


なるほど。理解したぞ。
去年の冬には『サンタさん(悟天)』から肩たたき券と似顔絵を貰った。

可愛い孫からの贈り物はもちろん今でも大事に取ってある。


「何だろう?楽しみだな」

「まずは、お花を見付けたから、はい!あげる!」


ぐいっと突き出された手に握られて居るのは、
白や青の小さい花だった

半数以上の人間は気付かずに通り過ぎるか踏みつけるくらいに小さい花だ。


「ありがとう。
悟天に似て可愛い花だな」


花が可愛い。なんて…
自分で言っておいて寒いぼが立つと程に臭いと思った

いつからだろうか。
いや、今が初めてかもしれない

悟天は本当に優しい子だから、こんな小さい花をも平等に愛し、人を幸せにする力を持っている

いつか俺以外の誰かを愛す時、必ずこの優しさに相手は惹かれる事だろう。

サイヤの血を引いてるとは到底思えないが、力の差が事実を証明している。

その力のせいでいつかの愛する人を傷付けてしまう悟天を想像すると、胸が痛んだ


「そう?へへ、」


その血に罪は無い。
いつか離れてしまうなんて、今はまだ考えたくもないけど。


「あと、もう1つ!
これは僕が作った分ね。」


今度は紙きれだった。
慣れない字で、『なんでもゆうことをきく』と書いてある。


「何でも言う事を聞く?」


『何でも』?
思わず顔がにやけそうになるのを、必死に押さえた


「そう!おじいちゃんのお願いだったら何でも聞くよ!」


嗚呼、本当に。手放したくない。『いつか』なんてもう、応援出来ない。

自分で自分を落とし入れてるのに気付いて無いのか

他の者には渡さない。
いつか女を連れてでも来たら殴って追い返してやる。


「約束だな。お願いは考えておくから。ありがとう」


既に答えは出ているが、ここは大人らしく、日を置いてからにしよう


「うん。わかった!
頑張ってゆうこと聞くから!」


その純粋無垢に汚れた部分を教え込むのはどうかと胸が痛んだりもしたが、他の誰かに教え込まれる位ならそんな良心捨てられる。

『いつか』他の誰かの所に行けない様に、離れられなくしてやろう


悟天に笑顔を向けるついでに、自分で自分をまだまだガキだな、と笑っておいた。




その後、
本当に離れられなくなったとかなってないとか。


有言実行なおじいちゃんでした。


ーENDー
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