♂x♂

□甘くなんか
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「…はぁ」


賑やかな光景を、頬杖をついて遠目に見ながら大きく息を吐いた。


「何だよ、そのポーズ!」
「あっはっはっは」
「お前なー!あはは!」
「腹筋が!割れるー!」
「死ぬ死ぬ!」


ラディッツや、リクームやらで編成された地獄のおちゃらけ軍団は今日も皆の人気者。

大爆笑の嵐。嵐。嵐


「フ、フリーザ様は、笑われ無いんですね。おかしいのに。ひっひっひっひ」


涙目のジースが腹を抱えながら聞いて来るが、敢えて無視しておいた。

が、本人は気にしていないのか次から次へ笑いを生むラディッツ達に、大口を開けて笑い転がっている


「…。遅い。」


我慢に慣れてない物だからこの人、もちろん我慢弱い。

小さく押さえていた気も、どんどんと膨らんでいく

小さくテーブルを叩いたフリーザは、しびれを切らし椅子から立ち上がってその場を離れた。


「あれ?フリーザ様…?
どうしたんですか?って、何処へ行かれるんですか!?」

「お供します」

「ただの散歩ですから」


そう言って、ドドリアとザーボンの二人を追い払いさっさと地獄のデコボコ道を進む。

気が立っているフリーザに二人は何も言えずに顔を見合わせた。


なんとか一人になり、とぼとぼと薄暗いデコボコ道を歩く

一体どこに居るやら。
約束の時間はもうとっくに過ぎているとゆうのに


「全く…」


紳士ぶっていても、所詮は真似事と言う訳だ

ずっとずっと歩いていると、いつのまにか血の池広場まで来てしまったようだ。

仕方がないので池の周りにある適当な岩に腰かけてブツブツと小言を呟く

どれ位そうしていただろう

トン…。誰かが目の前に降り立った気配を感じ、しかめっ面を上げる。


「待たせたな」


そこには、軽くはにかんだような笑顔を浮かべた待ち人が立っていた。 

やっと会えた。
本当はそう言って飛び付きたい気分だったが、素直になれずに口を尖らせセルを睨みあげる


「…遅すぎます」

「これを。」


セルは微笑んで、片手に持ったチョコレートケーキとミルクセーキを少し上げて見せてきた


「そんな物で機嫌を伺おうって魂胆ですね。」

「私のお手製だ」

「今日のティータイムはもう済ませました。」

「まぁ、そう言わずに。」

「っな…!?!」


含み笑いを残したまま、体をふわりと持ち上げられて、地から足が離れる

片手にはティーセット、
もう片手には自分。


「両手に花だ」

「降、ろしなさい!!!」

「素直じゃないな」


バタバタと手足を激しく動かし必死に抵抗してみるが、セルは何のその。優雅に地獄の空を飛び、しばらくして地面に降り立った。


「さあ着いた」


さっき皆が笑い合っていた場所を凄い速さで通り過ぎてあっとゆうまにいつものティータイム専用の場所に。


「ティータイムはもう済ませたと言ったはずです」

「ティータイムは一回きりと決まっている訳では無いだろう?さあ姫、機嫌を治して召し上がれ」


いつもの特等席に降ろされカップを目の前に置かれた。

しばらくフォークやお皿に乗せられたケーキとにらめっこをして、乱暴にフォークを握る


「ふん…」


顔が立たないので一応悪態吐きながら、渋々口に運ぶようなフリをした

これはずっと前に一度食べたきりだった有名なケーキ屋さんの物だと気付いていたけど、黙っておく。

お手製だなんて、誰にでもわかるバレバレの嘘だ。


「…甘いですね」

「甘ければ何でも良いんだろう?美味しくないか」

「誰も美味しくないとは言ってないでしょう」

「そんなに誉められると照れるな。」


照れる様子は全く無く微笑むセル。話がうまく噛み合わない。いつもの事だと言えばそうなのだけど。


「甘いです。」


この虫が自分に甘い事は知っている。甘やかされると困らせたくなるのが悪戯心という物で。


「甘くなんかない。」


ケーキの事か、性格の事か、解って居るのか居ないのか。表情からは察しきれなかった。


「そうですか。」


そう言って何も言わずに空のカップを差し出すと、解っていたかの様に何も言わず、すぐに注いでくれる

それがなんだか嬉しくて、悟られ無い様に小さく微笑んだ


「…甘いかもしれんな」


思い出したかの様にふと呟きながら苦笑いを浮かべて言うセルが、なんだか可笑しかった

怒っていた事も忘れて相手の思うままに、上機嫌。



-END-

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