♂x♂

□その姿
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「もしかして、隊長!?」

「…?」


また、ただの虫だった。

魂でも、虫でも、蛙でも、鳥でもとにかくなんでも馬鹿みたいに話しかけてる

だって、今どんな姿になってるかも解らないし。


「どこにいるんだ…」


こんな自分が嫌になる
俺らしく無い


「はあ…」


自分をこんなに憎んだのは初めてだった。本当に最低な自分。


「あ、お前…、」

「…げ。」


今、一番会いたくない人ナンバーワンが、こちらに気付き、ニヤニヤしながら近付いてきた。

なんでこうゆう気分の時に限って会っちゃうかな。普段は探したって見つからないのに。


「へー、黙る事も出来んだ」

「そりゃ、俺だってな…悩む時くらい有るっつうの。」

「悩む?」

「あ、いや、別に。」

「あっそ。」


少しの沈黙
さっきの虫が目の前を通り過ぎていく。沈黙に耐えきれず、横で煙草をふかすバーダックを軽く睨んだ。


「…なあ、聞かねえの?」

「あ?なにが」

「悩んでるって解って知りたくならないのかって」

「別に。」

「相変わらず冷たいな」


そうゆう所なんて全く似てないのに何でこんな奴…


「その身なり、隊長にそっくりなんだぜ…?」

「へー、落ちこぼれのサイヤ人ってとこか?」

「チェンジ…したんだ
俺だって本当の本当の姿なんて解んねぇ。」

「ああ、
何かそんな事言ってたなー」


そっくりすぎて、
見るだけで泣けてくる

こんな近くに居るのに全くの別人だなんて、信じられない


「こんなのって、無いよなあ…」

「ま、まあ…たまになら付き合ってやってやるぜ」


そうゆうたまに出る優しい所とか、重ねてしまう

れっきとした別人なのに、それを否定してしまう様な自分の考えが、嫌いだ


「俺はただ
お前と隊長を重ねて…」

「許してやるってんだ」

「…」


そう言ったバーダックは、こちらにチラリと目を向けて意地悪く笑い、すぐにまた宙へと視線を戻す


「…いっつも冷たいくせに」

「これも、作戦だな」


意地悪そうに喉を鳴らして笑うバーダック。俺は、小さく膝を抱えて、俯いた


「…あっそ」


いつもは名前なんて呼ばない。呼ばない理由は、自分が一番よく知っているつもりだ。

現実に戻りたくないから。
いつまでも一緒に居る気分に浸ってたいから。


「ありがとよー。」

「おう、泣くな」

「バー、ダック…」

「っ…」

「…」

「帰るわ、」

「あ」


ボリボリと頭を掻いたバーダックは、立ち上がりズンズンと地獄のデコボコ道を歩いていく。


これが今の俺なりの
精一杯のありがとうだ。

隊長が一瞬でもその同じような体に居たと思うとまだ傷は痛む

今までは隊長に似た所を必死に探して来たけど、このまま、ゆっくり、違う場所を探してみるのも、悪くないかな、なんて。


バーダックは、
聞こえない様に「いつか、その時が来たら中身も見てくれよ」と呟いて、俯くジースを横目に飛び立った。


ーENDー

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