サイナル部屋
□餅つき
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あちこちで湯気が立ち,規則的に掛け声とドスンと響く音が聞こえる。
年末の恒例行事「鏡餅づくり」の日なのである。
「先生っ先生!俺もやりたいってばよぅっ!」
杵を振り上げるアスマ先生に近付くと,先生は俺に柄を握らせてくれた。
「熊,ナルトから離れなさいよ…。」
柄を握った俺の手をアスマ先生の手が握りしめ,後ろからピタリと体をくっつけてくる。
カカシ先生はずいぶん機嫌の悪そうな声を出した。
「か弱いナルトが振り上げられると思うか?」
なおも平然と体をくっつけてくるアスマ先生に,俺は申し訳無いながら話しかけた。
「先生ぇ俺一人でついてみたいってばよ。」
背の高い先生を見上げると,そっと体を離してくれた。
「ナルトに言われちゃったらしょうがないな〜。」
「ほらナルトやってごらんよ。」
カカシ先生に促されて,杵を振り上げる。
結構な重さがあるそれを振り上げて,臼に落とそうとしたのだが餅をひっくり返す筈のカカシ先生の手が餅の上に置かれたまま退こうとしない。
「カカシ先生手危ないってば!」
重たい杵を支えているのも苦しくて,今にも降り下ろしてしまいそうなのにカカシ先生はニコニコ笑ったまま退かす気配がない。
「ナルト危ないじゃないですか。」
杵が軽くなったと思ったら,後ろからピタリと体をくっつけたサイが支えていたのだった。
「カカシ先生はナルトに手をつかせて「責任とってね?」とか言うつもりなんですから。」
「あ〜バレてたのね。」
ヘラヘラと笑う先生を見て,何だか寒気がした。
危うく先生の責任とらされるところだったってばよ。
「ナルトは目を離すとスグにこれだから困ったものです。」
「なっ!?子供扱いすんなってばよっ!」
サイは俺の手から杵を奪い取り,臼の中に器用に戻した。
「してないですよ。子供扱いするにはナルトは淫乱過ぎますからね。」
カカシ先生やアスマ先生だけでなく,回りにいたシカマルやサスケまでもが,サイの言葉に俺を見た。
「ばっ何言ってるんだってばよ!変な嘘つくなっ!」
俺は慌ててサイを引っ張り,その場から逃げ出した。
「嘘なんてついてませんよ。僕は本当のこ…」
「いいからお前は黙ってろってば!」
俺はつき終わった餅が運ばれる場所に何とかサイを引っ張り逃げた。
並べられた餅は,まだ湯気が立ち上っていてそれに手を伸ばすと,クニャリと手のかたちに変わるほど柔らかかった。