俺の後輩が猫になった。

□【番外編】
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『霧野が狩屋と俺のどっちを選ぶかを決める』



その勝負が始まって、1週間が経つ。

狩屋は、学校にも来ていない。

猫から戻れないんだろう。

なんでこうなってしまったのか、俺もよくわかっていない。



ただ……



あれから霧野は、毎日つまらなさそうにしている。

狩屋が居ないから

……俺はすぐわかった。



狩屋が休んでいるのはサッカー部で話になっていたけど…

霧野に『狩屋を選んだ』って言われるのが怖くて…

霧野にはその話が出来なかった。



霧野が俺に言わないのも……

きっと、言うタイミングがないだけだろう。



「霧野、一緒に帰ろう」

「あ、あぁ」



霧野と一緒に居られる…

それだけのことが、俺は嬉しかった。

だけど……もう、その時は来ていたんだ。



「霧野せんぱーい!キャプテーン!」

「どうした、天馬?」

「狩屋、最近ずっと休んでるじゃないですか?それで昨日、信助とお見舞いに行ったんですけど…」

「!!」



霧野を見ると、驚いた顔…というか、

『もしかして』といった顔をしていた。



「部屋から全く出てこないって…ごはんも食べないって、言ってて…結局、狩屋にも会えなくて……」

「狩屋のやつ…!」

「ぁ、霧野っ!?」



俺は反射的に叫んでいた。

霧野が狩屋の所へ行ってしまう――…

それが怖かった。



「神童ゴメン!俺、狩屋んとこ行ってくるから!」

「………。」



だけど、引き止めるわけにはいかなかった。

―――霧野が出した答えは…











夜。

霧野から電話が来た。



「もしもし?」

『あ、神童?今日はゴメン…一緒に帰れなくて』

「大丈夫だ。それで、狩屋はどうした?」

『明日から学校行くって。だからさ…部活の後、話したいんだけど…』

「そうか。わかった」

『じゃあ明日な』

「おやすみ」



狩屋は明日から学校へ行く。

つまりは今、人間に戻っている。

……つまりは、霧野がキスをした…。



霧野は狩屋を選んだ―――。



――最初からわかっていた答えだった。

ポロポロと涙が溢れる。

――明日、霧野の答えを聞いて、泣かないために…





今、泣いてしまおう。





込み上げてくる全ての思いを、今流してしまう。

そして明日からは、

霧野と狩屋を……応援する。



俺は、そう決めた。
【このときの霧野の心情はこちらへ】

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