上下の憂鬱
□02.アイス食べる?
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「…さん、…きじ…ん、……青雉さん!!」
…ッ。
「起きてください、大将青雉殿!」
「…んん」
「大将!」
あん…?
誰だよ…。
「20分後に臨時会議が行われるそうです。悠長に寝てないで起きてください!」
会議、ねぇ…。
めんどくせぇ。
「サボる」
「駄目ですって!」
サボらせてくれよ…。
あ、でも臨時会議って言うから普通の会議より…。
…………行かないとセンゴクさんうるさいよな。
仕方ない、行きますか。
動く事を拒む体を無理矢理動かした。
「よっこらせ」
おじいちゃんくさいのは気のせいだ。
*+*+*+
出て行った最初こそ普通に歩いていたものの、…会議室に近付くにつれて俺の足が重くなってる。
序でに気も。
ああもう面倒臭ぇ。
サボっちまうかな。
…あ、俺の足とまった。
行くなってか。
「クザン、此処で何突っ立っちょるんじゃ」
…死亡フラグ?
「サカズキタイミング悪…」
「…意味の分からん」
「オ〜、クザンとサカズキじゃないのぉ」
「え、何、二人して俺の邪魔しに来たの?」
「馬鹿言っちょらんで行くぞ」
「そうだよぉ、会議の為に此処通ったんだからぁ。そもそも後100mも無いじゃない」
あらら、本当だ。
けど悲しい。
ドカァァァアアンン!!
ッ!?
「鬼だ、鬼畜だー!絶対仏じゃないっての、コノヤロー!モデル“鬼”でも食っとけば良かったのにー!ムッキー!!」
会議室の扉の隣に大きい穴を作って出てきた女の子。
あらら、可愛いじゃないの。
鬼畜だとかなんだとか言ってるのがちょっと惜しいね…、センゴクさんの事、なのか?
海軍将校が羽織れる上着を羽織ってるし敵ではないんだろうけど…。
殺気も出てないし。
「命令には従わんか!!」
「っけんなー!おま、アレだけ嫌だ嫌だ言ってんのに従わせるとか鬼畜だろー!?氏ねェ、センゴクゥゥゥウウウ!!!」
字ィ違ェ。
じゃなくてあの子が手に持ってるのって武器じゃないの。
「覚悟ォ…あ、」
ただの戯れとして受け取っても良いのか?
そしてあの子は何でこっち向いてるんだ。
「ボルりん、サカズっさん、…誰ー?」
ぼるりん誰。
サカズっさん誰。
「オ〜、これはこれはくーちゃんじゃないのォ」
「こんな所で何しちょる。会議室の壁をぶち破りおって」
「ボルりん、サカズっさん、久し振りー。会議室の壁を打ち破っちゃったのには海よりも深ァーい訳があってねー、」
「長くなる予感がするんじゃが」
「じゃあ簡潔に言うとー、あのねー、仏と書いて鬼と読むセンゴク野郎が理不尽な命令を下してきやがったもんだからふざけんなー、と」
「海よりも浅いねェ」
「酷ーい」
え?
何なのこの子、ボルサリーノとサカズキの知り合い?
まぁ大将だから知ってると思うだけど俺は?
ボルりんがボルサリーノでサカズっさんがサカズキだとしたら俺は?
まさかと思うけど最後の「誰?」なの?俺。
「あ、ねーねー、この人誰ー?」
ビシッ。
女の子の人差し指が俺の方向を向いている。
コラコラ、人を指差してはいけません。
「俺を知らないの?あらら〜、困ったな、今夜空いてる?じっくり教えてあげ」
「黙れ変質者」
「…え、」
…変質者なんて初めて言われたんだけど。
「クザァン…ドンマイだねェ」
ちゃっかり笑うなよ、ボルサリーノ!!
「くーちゃん、」
「はいはいー?」
「クザンが何かしたのかあい?」
「別に何もー。そもそも此の人知らないしー、センゴクの隠し子ー?」
「か、隠し…」
「ブッ…。本当に知らないのォ?」
「本当に知らないのー」
「オ〜…」
隠し子…。
何か悲しい…。
本気で知らないって言われたのも悲しい…。
「大将青雉って名前を聞いたこと無いか?」
「無いー、あ、いや、あるー」
「どっちじゃ」
何なのこの子、ちょっと俺本気で傷付くよ?
「さっき鬼畜野郎が言ってたー」
「…もしかして聞いたのって其処でか?」
「そうだよー、鬼畜なじーさんに聞くまでは聞いた事無かった。はずー」
結局どっちなの。
あ、でも何かきついかも。
散々にぼろくそ言われて尚…ハァ。
「くーちゃァん、」
「はいはい二回目だねー、何ー?」
「さっき何でクザンに変質者って言ったんだあい?」
「………………」
悩むの!?
ちょっと悩まないでよ!!
「……………………………………見た目?」
「「………………」」
「二人共黙らねェで反論してくれよ」
どいつもこいつも…。
「……変質者さんー」
「…何?」
「変質者さんって言わないで欲しいー?」
「……そりゃあ、」
「じゃあお菓子頂戴よー」
「そうしたら変質者じゃなくなるよォ」
「実質変質者じゃしそのままでも良ぇんじゃないか」
「…………いじめ?」
「変質者で良いかー」
「そうだねェ」
「元からじゃろ」
「ちょ…、」
「腹ァ括れ、クザン」
何々?
運命の決断なの、此れ?
大して重要でも無い気が…。
変質者>お菓子
こうじゃないの?
…女の子の眼が怖い。
獣だ。
「あー…、なら俺の執務室にあるんだけど、
アイス食べる?
(食べるー!!)
(執務室にそんなのあったのォ?)
(…まぁ)